こんにちは。玉川歯科医院の玉川誠一と申します。
今日は歯の神経について話を少ししていこうかと思います。
私は子供のころ、何も知らなかったのでこんなことを考えたことあります。
歯は神経があるから痛くなるなら、最初から全部歯の神経取っちゃえ。
こんなこと考える子供イヤですねー、うんイヤな子でした(笑)
ただ勉強していくうちにこのやんちゃな発想が大きく間違いであったことは、さすがに何も知らなかった私も理解できました。
これは歯の構造の模式イラストになります。
歯の中にある青い繊維が神経として描かれていますね。
同時に同じような場所にも赤い繊維状に描かれているもの、これが血管になります。
つまり歯というのは血が通う組織なのです。
一般的に「歯の神経を取る」とはこの神経と血管を同時に除去することを指します。
神経血管がある=血流のある歯は、青々とした木々をイメージしてもらい、
神経血管を取った=血流のない歯は枯れてしまった木をイメージしてもらえば分かりやすいかもしれません。
神経血管を取った歯は脆く折れやすくなる、そんなイメージです…注1
また折れやすくなるほか、一度神経を取った歯は何らかの拍子で細菌が入り込んできて、歯の根の先が極端に腫れる可能性もありえる、という大きなリスクを伴います。
実際のレントゲン写真も見ていきましょう。
一度神経を取る処置をされ、綺麗にフィットした金属のかぶせ物がはいっていますが、
歯の根元の歯茎が腫脹しており、レントゲンでも根の先が黒い像に覆われているほか手前側の根は根全体を覆うレベルで黒い像があるのが分かります。
レントゲンでは金属や根に詰めてる材料は真っ白に、歯や骨などの硬い組織はやや白く、水や空気などは黒く映ります。画像に表示される黒い部分は、少なくとも歯や骨とは異なり、血液や膿などと想定され、これが目視上での歯茎の腫れに繋がっているのです。
(第117回歯科医師国家試験C-65より引用)
67 歳の男性。下顎右側第一大臼歯の歯肉腫脹を主訴として来院(略)
このような事態を防止するためには、やはり定期的な歯科受診による口腔清掃による予防、早期発見早期治療により適切な虫歯治療を行い、そもそも神経をとらないようにする、が重要といえるでしょう。
「痛くなってから歯医者さんにいけばいい」「神経をとれば解決する」というのは間違いであるとはっきり言えるのです!
(注1:すごく厳密にいえば、歯髄反応の失われた根管充填歯において、含有水分や剪断強度に靭性、ヴィッカース硬さ破壊荷重といった要素において神経の残ってる歯とは有意差はありません。しかし神経を取らざる得ないほど大きい虫歯が存在する、形を整えるために大きく歯を削る、大きい土台を入れざる得ない、などの歯の形を損なうことが歯の強度を大きく低下させるという田中利典先生らの研究結果があります)